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The Fang #4


WR,4回生,宮本拓実





なぜわざわざ親元を離れて立命館宇治へ?と聞くと「文武両道がよかったんで・・」と返しがきた。帰国生徒入試、充実した英語教育、本気の野球。「文武両道」という言葉は「クラブだけゴリゴリに」の生活を体良く隠すときに使われがち。ときにウソくさく聞こえることもあるけれど、宮本がもじもじと言葉にすると不思議とそんな感じがしないのはキャラのせいなのか?いやいや、今でもバイリンガル維持して、立命館大学の学部の中でも履修がハードな国際関係学部できっちり成績を修めつつ、フットボールに向き合っているからだろう。実はあたりまえのレベルが異様に高い。





カナダと日本の野球文化の違いにも、迷いはなく脇目もふらずにまっしぐら。あるものをあるがままに受け止めて、流されているように見えて決して流されていない。このしなやかさはどこからきたのか尋ねてみても「そう育ててくれた母親がすごいですよねー」と照れ笑いするだけ。けれど宮本と話していて気付かされた。右も左もわからないなら、それはきっと、入り口を真っ直ぐ進む絶好のチャンスなんだ。



高校野球を3年間やりきったあと、「大学の野球部はプロに行くレベルがゴロゴロしていたんで、そこで勝負をすることはあまり考えていませんでした。けど、準硬式野球部で野球を続けようとは思わなかったんです。」宮本が大学で選んだのは、これまでやったことのないフットボールだった。立命館宇治高校の卒業前、フットボール部のヘッドコーチ木下先生に「やってみたら?」と声をかけられて、自分から開けた新しい扉。カナダに行ったとき、親元を離れて一人で京都の立命館宇治高校へ進んだあのときの宮本と何も変わらない。





けれど、ここまでは思い通りにならない3年間だった。フットボール初心者だった宮本にとっては、試合経験を通じて最も伸びるここ2年間の成長の機会が奪われたことは、厳しい状況だ。大学レベルになると周りのスピードも速い。断トツのトップにはなれない。簡単そうに見えて難しく、奥が深いボールキャッチ、コンタクトスポーツでの自分のプレースタイルの確立、当たり強さ。


「やらなきゃいけないことはたくさんあります」最終学年になっても、まだまだもがき続けている。前回のTestingで40ヤードスプリントの結果は4.63秒でチームトップクラス。リフティングの数字も4年目での自己ベストを叩き出した。チーム内の序列では、今はトップに位置している。だが、肝心のフィールドのなかで自分の「控えめとやさしさの壁」をつきぬけきれない。



真っ直ぐに進むのは抜群に速い。見たいのは、いつものように右か左かなんて迷わずに、トップスピードで駆け抜けていく姿。宮本拓実、4回生。大学生活のゴールまで残された時間はあと7ヶ月と少し。さあ、どこまで行けるか?時代を、自分を、覆せ。



(了)

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